社会(法律・社会)

<差別解消>障害者差別解消法・合理的配慮の提供義務

障害者差別解消法は、「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、平成25年(2013年)6月に制定された法律」(内閣府HPより引用)です。

障害者差別解消法の重要ポイント

不当な差別的取り扱いの禁止

国・都道府県・市町村などの行政や、民間事業者は、障害者に対し、正当な理由なく、障害を理由として差別してはならない。」と決められています。

合格スルオ
「個人」ではなくて、「行政や企業」といった「組織」に対して差別解消を求めているんだね!

「合理的配慮」の提供義務

「行政や民間事業者は、障害者が権利を行使するために必要かつ適当な変更や調整(合理的配慮を求められた際、負担が重すぎない範囲で、対応しなければならない。」と決められています。

合格スルヨ
障害者が健常者と同じように社会で暮らせるように、困りごとがあれば変更や調整…合理的配慮をしてあげなければいけないのね!
そうだね。障害者もどこまでであれば自助努力で対応できるか考え、行政や企業と話し合ってどこまでの合理的配慮を行うかすり合わせを行う必要があるね!
合格スルオ

 

過去問

第36回 問13(社会の理解)

「障害者差別解消法」に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。

  1. 法の対象者は、身体障害者手帳を交付された者に限定されている
  2. 合理的配慮は、実施するときの負担の大小に関係なく提供する。
  3. 個人による差別行為への罰則規定がある。
  4. 雇用分野での、障害を理由とした使用者による虐待の禁止が目的である。
  5. 障害者基本法の基本的な理念を具体的に実施するために制定された

 

正解は5です。

 

<解説>

1 … 法の対象者は、身体障害者手帳を交付された者に限定されている

→ 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、その他難病など、障がいや社会的障壁により日常生活や社会生活に相当な制限を受ける人、が対象です。

 

2 … 合理的配慮は、実施するときの負担の大小に関係なく提供する。

→ 「負担が大きすぎない範囲」で提供する義務があります

 

3 … 個人による差別行為への罰則規定がある。

→ 個人ではなく、国・都道府県・市町村などの行政と民間事業者に罰則規定があります。

 

4 … 雇用分野での、障害を理由とした使用者による虐待の禁止が目的である。

→ 虐待に関しては、障害者虐待防止法で禁止されています。

 

障害者基本法第一条「この法律は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのつとり、全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め……」を具体的に実施するために定められました。

 

 

第32回 問88(障害の理解)

「障害者差別解消法」に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。

  1. 法の対象者は、身体障害者手帳を持っている人である。
  2. 合理的配慮とは、全ての障害者に同じ配慮をすることである。
  3. 共生社会の実現を目指している。
  4. 障害者は、合理的配慮の提供に努めなければならない。
  5. 障害者差別解消支援地域協議会は、民間事業者で組織される。

 

正解は3です。

 

<解説>

1 … 法の対象者は、身体障害者手帳を持っている人である。

→ 先ほどの問題とほぼ同じ選択肢ですね。「法の対象者」は問われやすいことがわかります。繰り返しになりますが、「身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、その他難病など、障がいや社会的障壁により日常生活や社会生活に相当な制限を受ける人」が対象です。

 

合理的配慮とは、全ての障害者に同じ配慮をすることである。

→ 障害者それぞれに合わせた合理的配慮が必要です

 

共生社会の実現を目指している。

→ 正解です。障害者基本法第一条の理念を具現化した法律です

 

障害者は、合理的配慮の提供に努めなければならない。

→ 合理的配慮の提供義務があるのは、障害者ではなく民間事業者や行政です。

改正され令和6年4月より民間事業者、行政ともに、合理的配慮の提供が義務化されました。

 

障害者差別解消支援地域協議会は、民間事業者で組織される。

→ 民間ではなく行政機関で組織されます。

 

第30回 問12(社会の理解)

「障害者差別解消法」に基づく対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 車いすを使用している障害のある人がバスに乗車する時に、介助を依頼された乗務員が身体障害者手帳の提示を求めて、乗車を許可した。
  2. 聴覚に障害のある人が市の窓口に来た時に、窓口担当者が手話通訳者と一緒に来るように伝えた。
  3. 視覚に障害のある人がレストランに一人で入った時に、店員が介助者と一緒に来るように求めた。
  4. 知的障害のある人が市役所の会議に出席した時に、本人の申出に応じて、わかりやすい言葉で書いた資料を、主催者が用意した。
  5. 精神障害のある人がアパートの賃貸契約をする時に、不動産業者が医師の診断書の提出を求めた

 

正解は4です。

2、3、5は障害者本人に配慮を求めているので不正解です。

 

第36回 問56(障害の理解)

次のうち、障害の特性に応じた休憩時間の調整など、柔軟に対応することで障害者の権利を確保する考え方を示すものとして、最も適切なものを1つ選びなさい

  1. 全人間的復権
  2. 合理的配慮
  3. 自立生活運動
  4. 意思決定支援
  5. 共同生活援助

 

正解は2です。

 

第35回 問5(社会の理解)

Fさん(19歳、女性、身体障害者手帳2級)は、先天性の聴覚障害がある。Fさんは大学生で、授業のときは手話通訳者が配置されている。Fさんは筆記による定期試験を受けることになり、試験実施に関する配慮を大学に申し出た。

次の記述のうち、Fさんの申し出を踏まえた合理的配慮として、最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 受験時間を延長する。
  2. 試験問題の文字を拡大する。
  3. テキストの持ち込みを許可する。
  4. 試験監督者が口頭で説明する内容を書面で渡す。
  5. 問題を読み上げる。

 

正解は4です。

 

Fさんは聴覚障害で音が聞こえず、大学の授業の時は手話通訳や配置されているとあります。

よって、定期試験でも「耳が聞こえない」ことに対する合理的配慮が必要と考えられます。

 

第27回 問2(人間の尊厳と自立)

「障害者差別解消法」に関する次の記述のうち、適切なものを一つ選びなさい。(法改正により一部改題)

  1. 「障害者総合支援法」の基本的な理念のもと、障害者の差別の解消を具体的に実施するためのものである。
  2. 障害者を身体障害、知的障害および精神障害のある者に限定している。
  3. 行政機関と民間事業者に対して、障害者に対する合理的配慮を法的義務としている。
  4. 差別について具体的に定義し、その解消に向けた措置等を定めている。
  5. この法律以前に、障害を理由とする差別や不利益な取り扱いの禁止について定めた条例を制定した地方公共団体は存在しない。

 

正解は3です。 (2024年4月より民間事業者も合理的配慮の提供が義務化されました)

 

<解説>

1 … 「障害者総合支援法」の基本的な理念のもと、障害者の差別の解消を具体的に実施するためのものである。

→ 「障害者総合支援法」ではなく、「障害者基本法」の基本的な理念を具現化するものです。

 

2 … 障害者を身体障害、知的障害および精神障害のある者に限定している。

→ 限定していません。発達障害や難病も含まれ、障害や社会的制約により日常生活に相当の制限を受ける人と定義されています。

 

4 … 差別について具体的に定義し、その解消に向けた措置等を定めている。

→ 差別について具体的に定義されていません。障害者個人が遭遇する社会的制約に対し、行政機関と民間事業者に柔軟で合理的な配慮をすることが義務化されています。

 

5 … この法律以前に、障害を理由とする差別や不利益な取り扱いの禁止について定めた条例を制定した地方公共団体は存在しない。

→ 障害者差別を禁じる条例を出している自治体はありました。

 

 

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