リハビリと聞いてみなさんが思い浮かぶのは、いわゆる「訓練」「トレーニング」ではないでしょうか。
けがをした人が再び歩けるように、再び動かすことができるように、「リハビリ」…訓練する。
このようなイメージ、ありますよね。
でも実は、リハビリテーションには4種類あるって知っていましたか??
リハビリテーションの理念
リハビリテーションの考え方として「全人間的復権」という言葉があります。
・全人間的復権とは…障害者が身体的・精神的・社会的・職業的・経済的に能力を発揮し、人間らしく生きる権利のこと、です。(介護求人ガイドより引用)
リハビリテーションはそんな「全人間的復権」を目指すものとされているのです。
リハビリテーションは「人間らしく生きる権利」を多角的に取り戻そうとする取り組み、と言えます。
4つのリハビリテーション
「人間らしく生きる権利」を取り戻していくリハビリテーションは4種類あります。
医学的リハビリテーション
医学的リハビリテーションはいわゆる機能訓練です。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが失われた機能を再び回復させるよう訓練します。
教育的リハビリテーション
私が小学校のころは、言葉の発達に遅れがある子は通常授業の時間に「言葉の教室」を受講したり、知的障害がある子も健常児と同じクラスで過ごしていました(インテグレーションといいます)。
医療的ケアが必要な子、さまざまな障害をもった子向けの教育…特別支援教育があります。
社会的リハビリテーション
障害がある方が社会で生き抜いていくには社会的障壁がたくさんあります。
社会で生き抜く力を養うためのリハビリが社会的リハビリテーションです。
公共交通機関の使い方や各行政の相談機関の利用方法について学んだりします。
職業的リハビリテーション
就職や復職・転職のリハビリです。ハローワークや障害者職業センターがあります。
医療・福祉系の専門職
リハビリテーションで活躍する医療・福祉系の専門職種を紹介します。
名称独占と業務独占
各専門職の資格には名称独占資格と業務独占資格があります。
業務独占
「業務独占」はその資格を持っている人だけが独占的に業務を行える資格のことです。
業務独占の資格を持っていない人が、資格を持っている人と同じ仕事をすることはできません。
名称独占
「名称独占」は当たり前のことですが、その資格を持っていない人はその資格の名称を用いてはいけないということです。
ただし、業務は独占していないので資格を持っていなくても、資格を持っている人と同様の業務をすることは可能です。
理学療法士(PT)
名称独占 / 医師の指示を元に、身体障害者に歩く・立ち上がるなど基本動作のリハビリを行う
作業療法士(ST)
名称独占 / 医師の指示を元に、身体障害者・精神障害者に食事・料理などの応用動作のリハビリを行う
言語聴覚士(OT)
名称独占 / 言語・音声・嚥下に関わるリハビリを行う。
義肢装具士
名称独占 / 医師の指示を元に、義肢を作る仕事
医師
業務独占 と 名称独占 / 患者の診療・治療・薬の処方
薬剤師
業務独占 と 名称独占 / 薬の専門家 薬の調剤 薬の販売
看護師
業務独占 と 名称独占 / 医師の診療補助 看護業務
社会福祉士
名称独占 / 社会福祉援助(ソーシャルワーク)= 福祉サービスを必要とする方の相談、医療福祉関係者との連携と相談者の自立への援助
精神保健福祉士
名称独占 / 精神障害者の相談を受け、助言、訓練を行う
介護福祉士
名称独占 / 高齢者・障害者など日常生活の援助
まとめの図
過去問
第33回 問50(障害の理解)
リハビリテーションに関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
- 語源は、「再び適したものにすること」である。
- ニィリエ(Nirje, B.)によって定義された。
- 医療の領域に限定されている。
- 自立生活運動とは関係がない。
- 機能回復訓練は社会的リハビリテーションである
正解は1です。「再び人間らしく生きる」ようにするのがリハビリテーションです。
<解説>
2 … ニィリエ(Nirje, B.)によって定義された。
→ ニィリエはノーマライゼーションを8つの原理にわけた人です。
3 … 医療の領域に限定されている。
→ 医療分野(医学的リハビリテーション)だけでなく、社会的・教育的・職業的に分かれています。
4 … 自立生活運動とは関係がない。
→ 自立生活運動(IL運動)は障害者の自立・自己決定を求めたものでリハビリテーションと関係がないとは言い切れません。
5 … 機能回復訓練は医学的リハビリテーションです。
第31回 問88(障害の理解)
世界保健機関(WHO)によるリハビリテーションの定義で、「利き手の交換」が該当するものとして、適切なものを1つ選びなさい。
- 職業的リハビリテーション
- 医学的リハビリテーション
- 経済的リハビリテーション
- 教育的リハビリテーション
- 社会的リハビリテーション
正解は2です。
利き手の交換とは、利き手が何らかの理由(事故によるけが・病気など)で、実用手まで回復できない時に、作業療法士が反対の手を実用的に使えるように訓練することを言います。
第29回 問21(介護の基本)
リハビリテーションに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 障害が固定してから開始する訓練のことである。
- 福祉用具を使用せずに、身体的自立を目指すことである。
- リハビリテーションには、名誉の回復の意味がある。
- レクリエーションとリハビリテーションは、対極の概念である。
- 施設サービスに限定されている
正解は3です。 →「再び人間らしく生きられるようにする」意味の中に、名誉の回復も含まれます。
<解説>
1 … 障害が固定してから開始する訓練のことである。
→ 障害が固定する前に訓練を開始するべきです。
2 … 福祉用具を使用せずに、身体的自立を目指すことである。
→ 福祉用具を使用しても良いですし、身体的自立を目指すことに限られてはいません。
4 … レクリエーションとリハビリテーションは、対極の概念である。
→対極の概念ではありません。心身の機能回復に役立つものです。
5 … 施設サービスに限定されている
→ 限定されていません。
第28回 問68(介護の基本)
リハビリテーションの理念を表す用語として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 機能回復訓練
- 就労移行支援
- 全人間的復権
- 地域定着支援
- 特別支援教育
正解は3です。
第32回 問38(発達と老化の理解)
糖尿病( diabetes mellitus )のある高齢者(要介護1)が転倒して、骨折( fracture )した。入院治療後に再び自宅療養を続けるための専門職の役割として、正しいものを1つ選びなさい。
- 看護師は、糖尿病( diabetes mellitus )の薬の処方箋を交付する。
- 理学療法士は、糖尿病( diabetes mellitus )の食事メニューを考える。
- 管理栄養士は、自宅で料理ができるような作業訓練をする。
- 訪問介護員(ホームヘルパー)は、居宅サービス計画を立案する。
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)は、訪問リハビリテーションの利用を提案する。
正解は5です。
<解説>
1 … 看護師は、糖尿病( diabetes mellitus )の薬の処方箋を交付する。
→ 医師の仕事です
2 … 理学療法士は、糖尿病( diabetes mellitus )の食事メニューを考える。
→ 管理栄養士の仕事です
3 … 管理栄養士は、自宅で料理ができるような作業訓練をする。
→ 作業療法士の仕事です
4 … 訪問介護員(ホームヘルパー)は、居宅サービス計画を立案する。
→ 介護支援専門員の仕事です。
第31回 問16(社会の理解)
障害者を支援する専門職の主たる業務に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 社会福祉士は、福祉関連法に定められた援護、措置の事務を行う。
- 精神保健福祉士は、心理検査を実施して精神面の判定を行う。
- 理学療法士は、手芸や工作の作業、家事の訓練を行う。
- 言語聴覚士は、聴覚検査や言語訓練、嚥下訓練(えんげくんれん)を行う。
- 栄養士は、摂食の訓練や摂食のための自助具の作成を行う。
正解は4です。言語聴覚士は嚥下訓練も行います。
<解説>
1…社会福祉士は、福祉関連法に定められた援護、措置の事務を行う。
→ 福祉事務所の仕事です。
2…精神保健福祉士は、心理検査を実施して精神面の判定を行う。
→ 精神科医や臨床心理士の仕事です
3…理学療法士は、手芸や工作の作業、家事の訓練を行う。
→ 作業療法士の仕事です
4…栄養士は、摂食の訓練や摂食のための自助具の作成を行う。
→ 自助具の作成は作業療法士・理学療法士・義肢装具士の仕事です
第27回 問13(社会の理解)
各専門職とその業務に関する次の組み合わせのうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 社会福祉士 ―――――――――――― 医療行為の実施
- 介護福祉士 ―――――――――――― 訪問介護(ホームヘルプサービス)の提供
- 介護支援専門員(ケアマネジャー) ― 地域包括支援センターでの権利擁護
- 主任介護支援専門員 ―――――――― 市町村での介護保険被保険者証の交付
- 医師 ――――――――――――――― 介護給付でのケアプラン作成
正解は2です。
<解説>
1 … 社会福祉士 ―――――――――――― 医療行為の実施 → 医師の仕事です
3 … 介護支援専門員(ケアマネジャー) ― 地域包括支援センターでの権利擁護
→ 社会福祉士の仕事です
4 … 主任介護支援専門員 ―――――――― 市町村での介護保険被保険者証の交付
→ 市町村の仕事です
5 … 医師 ――――――――――――――― 介護給付でのケアプラン作成
→ 介護支援専門員の仕事です
第26回 問56(障害の理解)
リハビリテーションの専門職の業務として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 言語聴覚士は、嚥下訓練を行う。
- 義肢装具士は、義肢を処方する。
- 視能訓練士は、高次脳機能障害(higher brain dysfunction)の評価を行う。
- 作業療法士は、知的障害者の疾病予防や健康づくり支援を行う。
- 理学療法士は、精神障害者の社会復帰の相談援助を行う。
正解は1です。言語聴覚士は嚥下訓練も行います。
<解説>
2 … 義肢装具士は、義肢を処方する。
→ 義肢の処方は医師の仕事です。医師の処方に基づき、義肢を作成します。
3 … 視能訓練士は、高次脳機能障害(higher brain dysfunction)の評価を行う。
→ 医師の指示を元に、眼科で視能検査や視能訓練を行います
4 … 作業療法士は、知的障害者の疾病予防や健康づくり支援を行う。
→ 作業療法士は医師の指示のもと、応用動作のリハビリを行う仕事です。
5 … 理学療法士は、精神障害者の社会復帰の相談援助を行う。
→ 理学療法士は医師の指示のもと、基本動作のリハビリを行う仕事です。
5の選択肢は精神保健福祉士の仕事です。