「権利擁護」に関する制度・概念を学びましょう。
成年後見制度
成年後見制度は判断能力が不十分な方が、不利益を被らないように保護する制度です。
成年後見制度は2種類あります。
判断力が衰えてから選ぶのが「法定後見」、判断力があるうちに自分の意思で選んでおくのが「任意後見」です。
日常生活自立支援事業
日常生活自立支援事業とは、判断能力が不十分な方が、地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行うもの。
→ サービス内容を理解し、利用者本人が契約できる程度の判断能力は必要。
・相談窓口 = 市町村の社会福祉協議会
・実施主体 = 都道府県・指定都市の社会福祉協議会
成年後見制度 と 日常生活自立支援事業 の違い
アドボカシー
最後に権利擁護に関連するカタカナ語の確認です。
アドボカシー = 代弁・権利擁護 を意味します。
高齢者や患者、障害者など、自らの意思や権利をうまく伝えられない方の代わりに意思を伝えたり、権利を代弁したりする意味合いで介護・医療現場では用いられます。
過去問
第27回 問15(社会の理解)
権利擁護に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
- 法定後見開始の申立てができるのは、利用者本人とその配偶者に限られている。
- 任意後見制度では、利用者本人による任意後見人の選定を認めている。
- 日常生活自立支援事業の対象者は、認知症高齢者で判断能力が不十分な者に限られている。
- 日常生活自立支援事業では、公共料金の支払いの支援は対象から除かれている。
- 映像や音声の情報は、医療・介護関係事業者の個人情報保護の対象ではない。
正解は2です。
<解説>
1 … 利用者本人、配偶者だけでなく、四親等以内の親族も申し立てできます
3 … 認知症高齢者だけでなく、知的障害者、精神障害者なども含まれます。
4 … 日常的な金銭管理も支援の対象です。しかも、試験ではよく出ます。
5 … 映像や音声も個人情報保護の対象です
第36回 問50(障害の理解)
成年後見制度において、成年後見等を選任する機関等として、正しいものを1つ選びなさい
- 法務局
- 家庭裁判所
- 都道府県知事
- 市町村長
- 福祉事務所
正解は2です
1の法務局は管轄を担っています。
第34回 問14(社会の理解)
「成年後見関係事件の概況(令和2年1月~12月)」(最高裁判所事務総局家庭局)における、成年後見人等として活動している人が最も多い職種として、正しいものを1つ選びなさい。
- 行政書士
- 司法書士
- 社会保険労務士
- 精神保健福祉士
- 税理士
正解は2です。
最も多く後見人になっているのは司法書士です。
ちなみに、親族以外の後見人が8割を占めています。
第36回 問55(障害の理解)
Dさん(36歳、女性、療育手帳所持)は、一人暮らしをしながら地域の作業所に通っている。身の回りのことはほとんど自分でできるが、お金の計算、特に計画的にお金を使うのが苦手だった。そこで、社会福祉協議会の生活支援員と一緒に銀行へ行って、1週間ごとにお金をおろして生活するようになった。小遣い帳に記録をするようにアドバイスを受けて、お金を計画的に使うことができるようになった。
次のうち、Dさんが活用した支援を実施する事業として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 障害者相談支援事業
- 自立生活援助事業
- 日常生活自立支援事業
- 成年後見制度利用支援事業
- 日常生活用具給付等事業
正解は3です。
・日常生活自立支援事業では「日常的な生活場面での金銭管理」が頻出です。
・問題文の中に、実施主体である「社会福祉協議会」や「生活支援員」という語句が出てきており、この語句からもすぐに日常生活自立支援事業だ、とわかると思います。
・また、「身の回りのことはほとんど自分でできる」ともあるので、自分で日常生活自立支援事業のサービス内容を理解し契約できる程度の判断能力を有しているとも判断できます。
第35回 問43(認知症の理解)
Lさん(83歳、女性、要介護1)は、アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)である。一人暮らしで、週2回、訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用している。
ある日、訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問すると、息子が来ていて、「最近、母が年金の引き出しや、水道代の支払いを忘れるようだ。日常生活自立支援事業というものがあると聞いたことがあるが、どのような制度なのか」と質問があった。
訪問介護員(ホームヘルパー)の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 「申込みをしたい場合は、家庭裁判所が受付窓口です」
- 「年金の振込口座を、息子さん名義の口座に変更することができます」
- 「Lさんが契約内容を理解できない場合は、息子さんが契約できます」
- 「生活支援員が、水道代の支払いをLさんの代わりに行うことができます」
- 「利用後に苦情がある場合は、国民健康保険団体連合会が受付窓口です」
正解は4です。
1 … 申し込みは「市町村の社会福祉協議会」 です。
家庭裁判所が窓口なのは成年後見人制度です。
第29回 問15(社会の理解)
Eさん(88歳、女性)は、一人暮らしで親族はいない。収入は年金と所有するアパートの家賃である。介護保険の訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用している。最近、認知症(dementia)が進んで、家賃の管理ができなくなった。
家賃の管理に関する訪問介護事業所の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- アパートの管理を不動産屋に委託するように、Eさんに助言する。
- 日常生活自立支援事業の活用を、Eさんに助言する。
- 訪問介護事業所が家賃の集金等を行う。
- 成年後見制度の活用を、担当の介護支援専門員(ケアマネジャー)に提案する。
- 隣の人に見守りを依頼する。
正解は4です。
・問題文に「認知症が進んで」とあり、Eさんに日常生活支援事業を提案しても、理解できず契約できないであろうことから、成年後見制度の活用を提案するのが妥当です。
第28回 問85(認知症の理解)
初期の認知症(dementia)で、家賃の支払を忘れて、家主から督促されることが多くなった人に対する支援者として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 民生委員
- 訪問介護員(ホームヘルパー)
- 訪問看護師
- 日常生活自立支援事業の専門員
- 通所介護(デイサービス)の介護福祉職
正解は4です。
1 … 民生委員は「地域住民の福祉に関する相談相手」のような立ち位置の職種です。
2・3・5 は「介護」「看護」をする職種であり、「家賃支払い」の支援者にはなりません。
第32回 問2(人間の尊厳と自立)
利用者の意思を代弁することを表す用語として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- インフォームドコンセント
- ストレングス
- パターナリズム
- エンパワメント
- アドボカシー
正解は5です。
正解以外の選択肢も重要語句です。
第30回 問2(人間の尊厳と自立)
Aさん(65歳、男性、要介護2)は、昨年、アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)と診断された。妻は既に亡くなり、娘のBさん(35歳)は遠方に嫁いでいる。Aさんは、現在、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)で生活している。Aさんは介護福祉職に対して、「Bは頭もいいし、かわいいし、きっと妻に似たんだな」とよく話していた。
Bさんが面会に来た時「誰だい。ご親切にありがとうございます」というAさんの声と、「私はあなたの娘のBよ、忘れちゃったの」「お父さん、しっかりしてよ」と怒鳴るBさんの声が部屋から聞こえた。
介護福祉職がAさんへのアドボカシー(advocacy)の視点からBさんに行う対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- Aさんへの行動は間違っていると話す。
- Bさんに対するAさんの思いを話す。
- Aさんの成年後見制度の利用を勧める。
- Aさんとはしばらく面会しないように話す。
- Bさんの思いをAさんに伝えると話す。
正解は2です。
・5…Bさん(娘)は意思表示できる方なので、介護福祉職がアドボカシー(代弁)する必要はありません。