「失禁」とは自分の意思に反して、尿・便が漏れてしまうことを言います。おもらしのことですね。
尿失禁には種類があります。見ていきましょう。
※便失禁にも尿失禁と同じように種類がありますが、介護福祉士国家試験には今まで出題されたことはありません。
尿失禁の種類
溢流(いつりゅう)性尿失禁
「溢れるように尿が流れ出てしまう」尿失禁を溢流性尿失禁といいます。
前立腺肥大や尿閉、脊髄の病気により尿が出にくくなることが原因です。
機能性尿失禁
認知症や運動機能の障害でトイレがわからない、どのように排尿すればよいのかわからない、トイレに間に合わないなどが原因の尿失禁が機能性尿失禁です。
機能性尿失禁は排尿機能に問題はありません。
切迫性尿失禁
強い尿意が起こり我慢できずに失禁してしまうのが切迫性尿失禁です。
強い尿意がありトイレに間に合わないのです。
脳梗塞・パーキンソン病・膀胱炎などが原因です。
反射性尿失禁
尿意がない・尿意が感じられないにも関わらず尿が漏れ出てしまうのが反射性尿失禁です。
脊髄損傷などが原因です。
腹圧性尿失禁
重いものを持ち上げたり、せき・くしゃみをしたときに腹圧がかかり尿が漏れるのが腹圧性尿失禁です。女性に多く、骨盤底筋が弱くなることが原因です。
過去問
34回 問52
認知機能の低下による機能性尿失禁で、夜間、トイレではない場所で排尿してしまう利用者への対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 日中、足上げ運動をする。
- ズボンのゴムひもを緩いものに変える。
- 膀胱訓練(ぼうこうくんれん)を行う。
- 排泄(はいせつ)してしまう場所に入れないようにする。
- トイレの照明をつけて、ドアを開けておく。
正解は5です。
認知機能の低下により尿失禁が生じている(機能性尿失禁)なので、トイレの場所がわかるようにしておけば尿失禁を防ぐことに役立つと考えられます。よって5が正解です。
33回 問104
Gさん(83歳、女性)は、認知機能は正常で、日常生活は杖歩行で自立し外出もしていた。最近、外出が減ったため理由を尋ねたところ、咳やくしゃみで尿が漏れることが多いため外出を控えていると言った。Gさんの尿失禁として、適切なものを1つ選びなさい。
- 機能性尿失禁
- 腹圧性尿失禁
- 溢流性尿失禁
- 反射性尿失禁
- 切迫性尿失禁
正解は2です。
「認知機能は正常」「咳やくしゃみで尿が漏れる」とあるので、2の腹圧性が正解です。
32回 問103
Jさん(80歳、男性)は、アルツハイマー型認知症( dementia of the Alzheimer’s type )と診断され、半年前から認知症対応型共同生活介護(グループホーム)に入居している。最近、Jさんは、トイレに行きたいと言ってグループホーム内を歩き回った後に、失禁するようになった。
Jさんの排泄の状態として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 反射性尿失禁
- 心因性頻尿
- 溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
- 機能性尿失禁
- 腹圧性尿失禁
正解は4です。
アルツハイマー型認知症によりトイレの場所がわからず失禁していると考えられます。
「トイレに行きたい」と言っているので尿意を感じていることもわかります。
2の心因性頻尿とは心理的原因によりトイレが近くなる状態のことです。
31回 問72
尿失禁に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
- 認知症(dementia)で尿を漏らすのを、腹圧性尿失禁という。
- トイレまで我慢できずに尿を漏らすのを、切迫性尿失禁という。
- 重い物を持った時に尿を漏らすのを、混合性尿失禁という。
- いろいろな原因が重なって尿を漏らすのを、溢流性尿失禁(いつりゅうせいにょうしっきん)という。
- 前立腺肥大症(prostatic hypertrophy)で尿を漏らすのを、機能性尿失禁という。
正解は2です。
<解説>
1…認知症(dementia)で尿を漏らすのを、腹圧性尿失禁という。
→ 機能性尿失禁です。
3…重い物を持った時に尿を漏らすのを、混合性尿失禁という。
→ 腹圧性尿失禁です。混合性とは腹圧性と切迫性の両方の症状を持つタイプの失禁です。
4…いろいろな原因が重なって尿を漏らすのを、溢流性尿失禁(いつりゅうせいにょうしっきん)という。 →混合性尿失禁です。
5…前立腺肥大症(prostatic hypertrophy)で尿を漏らすのを、機能性尿失禁という。
→ 溢流性尿失禁です。
29回 問114
次の事例を読んで、問いに答えなさい。
〔事例〕
Jさん(80歳、男性、要介護2)は、2年前に脳梗塞(cerebral infarction)を起こして、左片麻痺になった。Jさんは、自宅で妻(80歳)と過ごしたいと訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用して、二人で暮らしていた。
Jさんは、数か月前に肺炎(pneumonia)を起こして入院した。炎症症状は消失したが、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)を保菌した状態で退院した。
退院後のJさんは、なんとか立位がとれる状態である。排泄は、ポータブルトイレを利用して、妻が介助している。尿意はあり、1日の尿の回数も正常である。しかし、日が経つにつれて、妻には日に何回も行う立ち上がりや、ズボンや下着の上げ下ろしの介助は負担になり、時間がかかってJさんが失禁してしまうことも増えてきた。
Jさんに該当する排尿障害として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 溢流性尿失禁
- 腹圧性尿失禁
- 反射性尿失禁
- 切迫性尿失禁
- 機能性尿失禁
正解は5です。
「左片麻痺」による運動障害により(介助される)時間がかかって失禁しているため、5の機能性が正解です。
29回 問105
Gさん(81歳、女性)は日常生活は自立していて、活発に活動していたが、最近外出することが少なくなった。理由を尋ねると、「くしゃみや咳をしたときに、尿が漏れてしまうことが多くなったから」ということだった。
Gさんの失禁の原因として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 神経疾患
- 骨盤底筋群の機能低下
- 水分のとりすぎ
- 膀胱過敏
- 精神的な影響
正解は2です。
「くしゃみや咳をしたときに、尿が漏れてしまう」とあるので腹圧性尿失禁だとわかります。
腹圧性尿失禁の原因は2の骨盤底筋の機能低下が原因です。女性に多いです。
28回 問106
尿意を感じて我慢できずに失禁してしまう排尿障害として、正しいものを1つ選びなさい。
- 切迫性尿失禁
- 腹圧性尿失禁
- 溢流性尿失禁
- 反射性尿失禁
- 完全尿失禁
正解は1です。
27回 問54
機能性尿失禁がある利用者の介護に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 症状の改善に、骨盤底筋群を鍛える体操が効果的である。
- 尿路の疾患が疑われるので、泌尿器科の受診を勧める。
- トイレを洋式に替えて、洗浄機能付き便座を設置する。
- 留置カテーテルを使用する。
- 早めのトイレ誘導を行う。
正解は5です。
機能性尿失禁の方は、認知症などが原因でトイレの場所がわからない、排泄の仕方がわからないことにより失禁してしまうため、早めにトイレ誘導を行い介助により排泄していただくことで失禁を防げます。
26回 問104
認知症(dementia)の人によくみられる排尿障害として、正しいものを1つ選びなさい。
- 溢流性尿失禁
- 腹圧性尿失禁
- 心因性頻尿
- 切迫性尿失禁
- 機能性尿失禁
正解は5です。