がんや難病などで自分が死ぬことが明らかなことがわかってしまった時。
あなたならどう思いますか?
すんなりと「そうか死ぬんだ」と受け入れられるでしょうか?
そうですよね。
スルオくん、スルヨさんと同じように人間はやっぱり死ぬのは怖いんです。
そんな死を恐れる人間が、自分の死を受け入れるまでの死の受容過程を提唱した自分がキューブラー・ロスです。
死の受容過程
アメリカの精神科医だったエリザベス・キューブラー・ロスは、1969年に『死ぬ瞬間』という著書を発表しました。
その中でキューブラー・ロスは自分の死を受け入れるまでの過程…「死の受容過程」を提唱しました。
第1段階 否認
自分が近い将来確実に死ぬことを「否認」するのが最初の段階です。
「診断が間違っているんじゃないか」
「信じられない」
「そんなはずがない」
という風に、病気・死 を否認するのです。
第2段階 怒り
第1段階が終わり、病気や死を「否認」できず認めるしかなくなると、次は「怒り」がこみ上げてきます。
「なんで自分がこんな目に合わなければいけないんだ!」
「こんなに一所懸命生きてきた自分がなんで死ななければいけない!」
こういう風に思うのです。
第3段階 取引
怒りのステージが終わると、次は「取引」が始まります。
「今から〇〇するから、治してください」という「取引」をしようとするのです。
例えば…
「つらい治療を受けるから、治してください」
「神様…なんでもしますから…治してください」
こういう心理状態ですね。
第4段階 抑うつ
第3段階「取引」しても死が免れないことがわかると、抑うつ状態に陥ります。
絶望、悲嘆、虚しさ、、、、まさに「抑うつ」です。
第5段階 受容
第4段階「抑うつ」を乗り越えると、ついに「受容」の境地が訪れます。
死はどのみち誰にでも訪れる自然なこと、など、死期が近い状態を受け入れるのです。
過去問
31回 問108
Eさん(75歳、男性)は、2年前に肺がん(lung cancer)と診断されて、抗がん剤治療を受けていたが、効果がなく1か月前に治療を中止した。その後、日常生活に支援が必要となり、訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用することになった。訪問介護員(ホームヘルパー)は初回訪問を終えて帰ろうとした時に、いきなりEさんから、「もう来なくてもいい」と厳しい口調で言われた。また、「どうして私だけが、がん(cancer)にならなければならないのか」という言葉も聞かれた。
Eさんの心理状態について、キューブラー・ロス(Kübler-Ross, E.)が提唱した心理過程の段階として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 否認
- 怒り
- 取り引き
- 抑うつ
- 受容
正解は2です。
「どうして私だけが、がん(cancer)にならなければならないのか」と怒りをあらわにしているので、正解は2です。
30回 問70
キューブラー・ロス(Kubler-Ross.E.)が提唱した死の受容過程における「取り引き」に該当するものとして、適切なものを1つ選びなさい。
- 死ぬのがなぜ自分なのかと怒る。
- 自分が死ぬことはないと思う。
- つらい治療を我慢して受けるので助けてほしいと願う。
- 安らかな気持ちで死を受け入れる。
- もう助からないと思って絶望する。
正解は3です。
<解説>
1:死ぬのがなぜ自分なのかと怒る。
→ 第2段階である「怒り」です。
2:自分が死ぬことはないと思う。
→ 第1段階である「否認」です。
4:安らかな気持ちで死を受け入れる。
→ 第5段階である「受容」です。
5:もう助からないと思って絶望する。
→ 第4段階である「抑うつ」です。
27回 問108
Fさん(72歳、男性)は数か月前から食欲不振があり、体重も減少した。市内の総合病院を受診したところ、末期の胃がん(gastric cancer)と診断され、緩和医療を受けることを勧められた。
Fさんの今の心情を、キューブラー・ロス(Kubler-Ross,E.)の提唱した心理過程の第一段階に当てはめた表現として、適切なものを1つ選びなさい。
- 「病気を治すためなら、財産を全部使ってもいい」
- 「なぜ私だけが病気になって、死ななければならないのか」
- 「診断は何かの間違いでとても信じられない」
- 「死は誰だれにでも訪れる自然なことだから、受け入れよう」
- 「末期がんなら、何をしてもどうせ無駄だ」
正解は3です。
第1段階は「否認」です。
<解説>
1:「病気を治すためなら、財産を全部使ってもいい」→ 第3段階 取引
2:「なぜ私だけが病気になって、死ななければならないのか」→ 第2段階 怒り
3:「診断は何かの間違いでとても信じられない」→ 第1段階 否認
4:「死は誰だれにでも訪れる自然なことだから、受け入れよう」→ 第5段階 受容
5:「末期がんなら、何をしてもどうせ無駄だ」→ 第4段階 抑うつ