ストレングスとエンパワメントとは
自立支援を行う時には、利用者様の長所・強み・意欲・能力を理解し引き出していくことが大切です。
「長所・強み・意欲・能力」のことをストレングス
「(長所や強み・意欲・能力を)引き出していく」ことをエンパワメントといいます。
過去問
第33回 問122 (総合問題)
次の事例を読んで、問題に答えなさい。
〔事例〕
Aさん(10歳、男性)は、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)であり、多動で発語は少ない。毎日のように道路に飛び出してしまったり、高い所に登ったりするなど、危険の判断ができない。また、感情の起伏が激しく、パニックになると止めても壁に頭を打ちつけ、気持ちが高ぶると騒ぎ出す。お金の使い方がわからないため好きなものをたくさん買おうとする。
現在は、特別支援学校に通っており、普段の介護は母親が一人で担っている。Aさんのサービス利用開始から6か月が経ち、支援の見直しをすることになった。Aさんの現状は、散歩では周囲を気にせず走り出すなど、まだ危険認知ができていない。介護福祉職はルールを守ることや周りに注意するように声かけをするが、注意されるとイライラし、パニックになることがある。
一方で、スーパーではお菓子のパッケージを見て、硬貨を出し、長時間その場から動こうとしない。介護福祉職は、Aさんがお菓子とお金に注目している様子から、その力を引き出す支援を特別支援学校に提案した。介護福祉職が特別支援学校に提案した支援の背景となる考え方として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- エンパワメント(empowerment)
- アドボカシー(advocacy)
- ピアサポート(peer support)
- ノーマライゼーション(normalization)
- インクルージョン(inclusion)
正解は1です。
事例問題は問題文が長くて読む気が失せることもあるかもしれませんが、問題で問われていることの答えは問題文の一部を見れば簡単にわかるものがかなり多いです。
極論ですが、介護福祉士試験は思考力は必要ありません(笑)
必要なのは広く浅い知識量(知っているか、知らないか)、問題文からキーワードを見つけ出す能力です。
正解以外の選択肢も重要語句なので確認しておきましょう。
- 2 アドボカシー(advocacy)→ 「代弁」を意味します。
- 3 ピアサポート(peer support)→ 同じ立場にある仲間同士で支え合う意味です。
- 4 ノーマライゼーション(normalization)→ 超!重要語句です。
- 5 インクルージョン(inclusion)→ 「包括」を意味します。
第28回 問20 (介護の基本)
利用者の自己決定に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 支援者は、利用者の自己決定に対する働きかけを行ってはならない。
- 援助を受けている利用者は、自己決定を行うことができない。
- 判断能力が低い利用者の場合、家族の意向を優先して決定する。
- 利用者はエンパワメントアプローチ(empowerment approach)をされることで、自己決定能力が高まる。
- 自己決定には、責任能力の有無が条件となる。
正解は4です。
4. 利用者はエンパワメントアプローチ(empowerment approach)をされることで、自己決定能力が高まる。
→ エンパワメントによって自己決定能力が高まる…引き出されます。
5.「自己決定には、責任能力の有無が条件になる」は不正解です。
→ 利用者様に責任能力があろうとなかろうと、利用者様の意思や思いを尊重し、なるべく自己決定していただこうとする姿勢が大切です。
第35回 問XX (介護過程)
ストレングス(strength)の視点に基づく利用者支援の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 個人の特性や強さを見つけて、それを生かす支援を行うこと。
- 日常生活の条件をできるだけ、障害のない人と同じにすること。
- 全人間的復権を目標とすること。
- 権利を代弁・擁護して、権利の実現を支援すること。
- 抑圧された権利や能力を取り戻して、力をつけること。
正解は1です。
2. 日常生活の条件をできるだけ、障害のない人と同じにすること。
→ ノーマライゼーション の考え方です。
3.全人間的復権を目標とすること。
→ リハビリテーションの基本理念です。
4.権利を代弁・擁護して、権利の実現を支援すること。
→ アドボカシーです。
5.抑圧された権利や能力を取り戻して、力をつけること。
→ エンパワメント の説明です。
第35回 問XX (総合問題)
次の事例を読んで答えなさい。
〔事例〕
Eさん(35歳、男性)は、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)があり、V障害者支援施設の生活介護と施設入所支援を利用している。Eさんは、毎日のスケジュールを決め、規則や時間を守ってプログラムに参加しているが、周りの人や物事に関心が向かず、予定外の行動や集団行動はとりづらい。コミュニケーションは、話すよりも絵や文字を示したほうが伝わりやすい。
Eさんが利用するV障害者支援施設では、就労継続支援事業も行っている。災害が起こったときに様々な配慮が必要な利用者がいるため、施設として防災対策に力を入れている。また、通所している利用者も多いので、V障害者支援施設は市の福祉避難所として指定を受けている。
Eさんのストレングス(strength)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 行動力があり、すぐに動く。
- 自分で決めたことを継続する。
- 新しいことを思いつく。
- コミュニケーション力が高い。
- いろいろなことに興味がもてる。
正解は2です。
事例の2~4行目に
「Eさんは、毎日のスケジュールを決め、規則や時間を守ってプログラムに参加しているが、周りの人や物事に関心が向かず、予定外の行動や集団行動はとりづらい。コミュニケーションは、話すよりも絵や文字を示したほうが伝わりやすい。」
とあり、「毎日のスケジュールを決め、規則や時間を守ってプログラムに参加している」のはEさんの長所・強み・できていること、といえるので、2がストレングスといえます。
事例の後半部は読まなくても解ける問題です。